前述のとおり、2018年12月31日に「moto FANBOOK」をコミックマーケット95で出しました。そこで、個人的にいくつかのチャレンジというか、小さな実験をしたので簡単にレポートしたいと思います。
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(2020年5月4日update)なお、2019年12月開催の「コミックマーケット97」でのキャッシュレス決済実験についても掲載中です。
キャッシュレスとコミケは相性が悪い?
2018年話題になった「キャッシュレス決済」をコミックマーケットで試してみました。とはいえ、コミックマーケットでは既にSuicaなどの電子マネー決済を導入しているブースは存在します。
しかし、歴史を振り返ってみると、コミケでも使って欲しい的な発言をしていた「PayPal Here」(日本撤退済み)が炎上したりなど、電波状況や現金に比べてかかる手間などからコミケとキャッシュレス決済はあまり相性がよくないんじゃないか、というイメージがありました。
また、前述のSuicaなどの電子マネーやクレジットカードを導入するには少なくとも加盟店登録および審査が必要です。自分も個人事業主としてSquareでのVisa、Mastercard決済の審査は通っていますが、JCBやSuicaも……と考えるとやや腰が重くなります。
「無理しないキャッシュレス」を試してみた
そこで今回は「無理しないキャッシュレス」を実践してみました。サービス選びの基準は以下のとおり。
- QRコードで表示して決済できること(特別な機材はいらない)
- 審査は最小限で済むこと
- 手数料もなるべく最小限に(サークル側としての負担を少なく)
- ある程度の知名度があること(手法などお客さん側の負担を考えて)
1番のQRコード表示は、手持ちの「YOGA BOOK(Android版)」をブースに設置。Googleスライドをプレゼンテーションモードで表示させ、通常時は決済可能なサービス名一覧を、決済時はスワイプして、該当決済サービスのQRコードを表示するようにしました。
そして、数あるサービスから以下のものを選びました。
実際どのぐらい使われた?
当日は、先ほどのディスプレーに掲示しつつ、ご購入いただいた方に声かけで「現金とキャッシュレス決済どちらにされますか?」と聞かせていただきました。
結果、PayPal.me以外の3サービスがそれぞれ3回ずつ使われました。なお、PayPayに関してはお一人だけ、QRコードが読み取れないという不具合があり、現金での決済に変わりました。
各サービスでの決済方法の特徴や感想は以下のとおり。
一番使いやすかった「pixiv PAY」
さすが、即売会での使用を想定してサービスが設計されているだけあり、4サービス中で最も使いやすかったです。
4サービス中、唯一こちら側で決済額を入力してから、お客さん側に読み取ってもらう必要があるからでしょう。シンプルに「購入商品を入力」→「QRコードを表示」→「QRコードを読み取り」の3ステップで決済が完了します。
ちなみに、pixiv PAYアプリにはレジ機能があります。商品を入力したあと「QRコード決済(pixiv PAY)」と「現金」を選択する形です。今回のコミックマーケットの出展では、すべてpixiv PAYアプリのレジ機能で売上を管理しました(pixiv PAY以外の決済は現金としてカウント)。
あとから時系列順および商品毎での販売履歴の確認ができるので、自分は会場で在庫と付き合わせて売上金のミスがないかチェックできました。
なお、決済手数料は無料ですが、売上金の振り込みには振込手数料が発生します。金額は3万円未満であれば200円、3万円以上であれば300円といった具合です(2019年1月7日時点)。
意外にお手軽な「Kyash」
Kyashは個人間送金の機能を使うことで、現地での決済を可能にしました。手順に関してはやや煩雑で以下の4ステップ。
- QRコードを読み込む
- お客さん側で送金額を入力
- 送金するをタップ
- 出展側で送金されたか確認
ステップ数が多いから面倒というわけではなく、「送金額をお客さんが入れる必要がある」「送金されたかきちんと確認する」というステップがpixiv PAYに比べてやや手がかかります。
Kyashも金額を指定してURLを出力する機能があるので、そのURLをQRコード化すれば2番のステップは回避できます。ただ、今回はmoto FANBOOKだけではなく各種委託品があったので、一緒に買っていただける方もいて、その場合はその金額の組み合わせ分だけコードを発行させておく必要があるため、現実的ではないと考えました。
あと、Kyashは残高の現金化は不可となっています。集めたお金は、Visaカードとして使わないといけません。全然使えるのですが、これがメインの売上となってしまうと、印刷費の補填ができません。いくらそろばんの上では同じと言えど、精神衛生上よろしくありません。今回は3回の決済だったため、その後の打ち上げの支払いで残高は使い切りました。
説明が難しい「PayPay」
話題のPayPayも個人間送金をサポートしているので、Kyashと同じ手順、同じ手間で支払いが可能です。
ただし、PayPayはKyashと違い1つ説明を追加しないといけない点があります。それは、「銀行口座などからチャージした残高でないと送金できない」という点です。
Kyashは登録されているクレジットカードから1度Visaプリペイドの残高を購入し、それを送金するという手法をとっているため、クレジットカードのみを登録していても問題ありません。
PayPayの場合は、クレジットカードでの支払いおよびキャンペーン等で取得した残高は利用できません。あくまでも銀行口座などでチャージした残高のみを送金できるわけです。
エラーがあった1件も、恐らくクレジットカードのみの登録した方だったんじゃないかと思います。あと、残高がない場合はいちいちチャージをしていただく必要があるので、お客さん側にも負担がかかってしまったと思います。
ちなみに、PayPayは今後「残高の出金」機能を実装すると予告していますが、現時点(2019年1月7日)では未実装のため、今回発生した売上金はPayPay内部に留まっています。
これを使うにはファミリーマートなどのPayPay加盟店で使うしかないわけですが、通常時のPayPayのキャッシュバック率は0.5%とあまりよくないため、今後あるであろうキャンペーンの時まで寝かせておくつもりです。
名前がQRコードと結びつかない?「PayPal.me」
最後に、1度も使われなかったPayPal.meについて。PayPal.meは、PayPalの個人送金ではなく個人事業者向けの決済サービスです。相手にURLを送り、そこからお客さん側はPayPalアカウントの残高やクレジットカード、銀行口座から支払えるという登録さえしていれば便利なサービスとなっています。
PayPal.meの準備には簡単な申請と個人認証(郵便)が必要で、前日申請をして翌日にスタートとはいきませんが、きちんと審査が通れば問題なく使えます。
手順はKyashやPayPayと同じ程度で、こちらはアプリではなくブラウザーがあれば利用できるのが特徴です。ただし、今回の4サービス内では唯一、決済手数料がかかるので、1回も決済がなかったのは残念な気持ちとほっとした気持ちが半々といった具合です。
ただ、PayPalは通常時3.6%+40円の手数料(30万円以下、国内)がかかりますが、少額決済手数料適用を申請することで、5%+7円まで下げることができます。例えば、1000円の同人誌を頒布した場合、
- 通常時:1000円×0.036+40円=76円
- 少額決済手数料適用時:1000円×0.05+7円=57円
となります。19円ほどの差にはなりますが、申請しないよりはマシと言えます。ただし、国内取引2357円以上の場合はこの手数料だと少額決済手数料の方が割高になってしまうため、複数の頒布品がある場合は注意が必要でしょう。
1回も使われなかった原因としては、PayPal自体は知っているものの、それを即売会という場で、QRコードで使おうという発想があまりなかったからではないかという気がしています。一般的に「PayPal=オンラインで使うためのもの」だからではないでしょうか?
全体的なまとめ
最初懸念していた通信環境のトラブルもなく、想定していたよりスムーズにキャッシュレス決済ができました。
何人かの方は「コミケでキャッシュレス決済ができるなんて珍しくて」と話ながら立ち寄っていただいた方もいたので、少ないながらも宣伝効果があったのかなと思います(とくにPayPayのネームバリューが強かったかも)。
一方で、手間という意味ではやはり現金に比べってやや手間です。その分、お金の管理や釣り銭を渡す手間がなくて済むわけですが、お客さん側の手間が多くなるのは複雑な気持ちです。キャッシュアウトの仕組みがまだ整備されていないのもやや残念と言えるでしょう。
とはいえ、仕事でもキャッシュレス周りの記事を書いている自分としては、今後もこのような機会があれば色々試していきたいと思っています。